経済は主に「マクロ(大局的)」と「ミクロ(局所的)」に分けられます。
前回解説したファンダメンタル分析は主に「マクロ」経済を見ていく必要がありますが、今回は「マクロ」に影響を与える日本の金融政策について解説します。
日銀総裁 黒田東彦氏の金融政策
出典:Wikipedia
言わずと知れた現在の日本銀行総裁です。
彼の金融政策により、国債の金利や資金供給量(マネタリーベースと言います)が動きます。
黒田総裁の金融政策は「黒田バズーカ」と呼ばれ、ドル円相場を大きく動かしました。
2013年3月の就任から現在まで3発もバズーカを打ってますので、この3発のバズーカとその後の金融政策(鉄砲でしょうか)を、分かりやすく解説します。
「黒田バズーカ第一弾」(量的・質的金融緩和)
時は2013年4月4日、「物価上昇率2%」をターゲットに「異次元の金融緩和」というバズーカ砲が打ち込まれました。
この異次元緩和とは、マネタリーベース(資金供給量)を2年で2倍にするという大胆な方法で、ドル円は1ヵ月半で1ドル93円から103円まで上昇しました。
政策のポイントは、金融緩和を「量」と「質」の双方向から進めますので、投資家の皆さん、国債よりも株式投資を進めて下さいね~!ということです。
「量的緩和」とは国債買い入れによる資金供給量の増加
「質的緩和」とは期間の長い金利に低下圧力をかけること
を意味します。
具体的には、以下方針を打ち出しました。
- 長期国債の保有残高を年間50兆円のペースで増加させる
- 長期国債の買い入れ対象を40年物にまで拡大
- 国債の買い入れの平均残存期間を3年弱から7年程度に延長
日本の資金供給量を増やすことにより円安に誘導し、投資家のお金を株式へ誘導することにより、物価上昇を目指しました。
「黒田バズーカ第二弾」量的・質的金融緩和の拡大
時は2014年10月31日のハロウィンでした。
2014年4月に消費税も5%から8%に引き上げられ国内の景況感も悪化した中、その年の10月に日銀は量的・質的金融緩和の拡大(追加緩和)を決定しました。
なぜかと言うと、第一弾の時に「物価上昇率2%」をコミットしたのですが、この段階ではまだ1%程度までしか上昇していなかったために、さらなる緩和で「物価上昇率2%」を達成しようとしました。
主な具体策は以下です。
- マネタリーベースの増加を年60~70兆円から年80兆円に拡大
- 長期国債の買い入れ量を年50兆円から年80兆円に増やす
- 国債の買い入れの平均残存期間を7年程度から7~10年程度に延長
この時期での追加緩和が市場の予想に反していたため、「ハロウィンサプライズ」と呼ばれ、ドル円・株式共に大きく上昇しました。
「黒田バズーカ第三弾」(マイナス金利付き量的・ 質的金融緩和)
時は2016年1月29日。
2016年に入ってからもコミットメントした「物価上昇率2%」を達成できない日銀は、「量」・「質」の緩和では足りないとして「金利」面からも緩和を促しました。
俗にいう、「マイナス金利」の導入です。
マイナス金利導入とは、銀行が日銀に預けているお金に関して「預けすぎると逆に金利をもらうよ!」という話です。
日銀にお金を預けておくと、お金が減っていくんです。
おかしな話ですよね~。
でも欧州では実際に導入されていた制度ですが、日本では初です。
そうなると、銀行は企業にお金を貸し→市場のお金が増え→円安・株高になる
というシナリオを描いたのです。
具体的には、以下政策を取りました。
- 日本銀行当座預金を3段階に分割し、プラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用
- 国債の買い入れの平均残存期間を7~10年程度から7~12年程度に拡大
しかし、その後ドル円は円高方面に向かいました。
中国の景気不安、米国での利上げの延期だったりと外部要因の悪化が原因です。
とどめは、イギリスが国民投票でEU離脱が濃厚になり、一時99円まで円高が進みました。
「黒田水鉄砲第4弾」
イギリスのEU離脱で市場が混乱する中、黒田日銀総裁は第4弾となる金融政策を2016年7月29日に発表しました。
それは、「ETFの買入額を年3兆3000億円から年6兆円に拡大する」というものでした。
これは市場にとって期待外れの政策で、99円から105円に戻ってきていた
ドル円を下落させてしまいました。
「黒田水鉄砲第5弾」
時は2016年9月21日、第5弾の政策である
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を発表しました。
最大の趣旨は、国債の「イールドカーブ」をコントロールするというものです。
「イールドカーブ」とは・・・
通常短期の国債利回りは低く、長期の国債利回りが高くなります。
この「金利差」を「イールドカーブ」と呼び、この利回りの差によって銀行は運用益を確保します。
しかし、これまでの政策で日銀が国債を買い続けたことにより、「イールドカーブ」がフラットになっていたのです。
フラットになることによって、銀行の収益は悪化し、マイナス金利導入により、株価も低迷していました。
この「イールドカーブコントロール」、プロの金融政策を評論する人によってはかなりナイスな政策と言っている人もいましたが、株式市場では銀行株のみ上昇し、為替には大きく影響しませんでした。
とここまで、黒田総裁が行ってきた5つの金融政策について解説しましたが、政策のタイミングをチャートに表しました。
2013年4月4日 :「量的・質的金融緩和」
2014年10月31日:「量的・質的金融緩和の拡大」
2016年1月29日 :「マイナス金利付き量的・質的禁輸緩和」
2016年7月29日:「ETF買い入れ額増加による追加緩和」
2016年9月21日 :「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」
長期で見ると、第一弾・第二弾における効果の高さがうかがえます。
第三弾からは、黒田バズーカも威力が弱まり、外部環境に左右される市場となってますね。
この5つの金融政策の後に、トランプ相場が来ます。
次回、アメリカの金融政策の流れを解説した上で米国経済指標とトランプ相場についても解説します。
FX初心者向け解説
黒田バズーカとは? 日銀の金融政策を解説します。
更新日:
経済は主に「マクロ(大局的)」と「ミクロ(局所的)」に分けられます。
前回解説したファンダメンタル分析は主に「マクロ」経済を見ていく必要がありますが、今回は「マクロ」に影響を与える日本の金融政策について解説します。
目次
日銀総裁 黒田東彦氏の金融政策
出典:Wikipedia
言わずと知れた現在の日本銀行総裁です。
彼の金融政策により、国債の金利や資金供給量(マネタリーベースと言います)が動きます。
黒田総裁の金融政策は「黒田バズーカ」と呼ばれ、ドル円相場を大きく動かしました。
2013年3月の就任から現在まで3発もバズーカを打ってますので、この3発のバズーカとその後の金融政策(鉄砲でしょうか)を、分かりやすく解説します。
「黒田バズーカ第一弾」(量的・質的金融緩和)
時は2013年4月4日、「物価上昇率2%」をターゲットに「異次元の金融緩和」というバズーカ砲が打ち込まれました。
この異次元緩和とは、マネタリーベース(資金供給量)を2年で2倍にするという大胆な方法で、ドル円は1ヵ月半で1ドル93円から103円まで上昇しました。
政策のポイントは、金融緩和を「量」と「質」の双方向から進めますので、投資家の皆さん、国債よりも株式投資を進めて下さいね~!ということです。
「量的緩和」とは国債買い入れによる資金供給量の増加
「質的緩和」とは期間の長い金利に低下圧力をかけること
を意味します。
具体的には、以下方針を打ち出しました。
日本の資金供給量を増やすことにより円安に誘導し、投資家のお金を株式へ誘導することにより、物価上昇を目指しました。
「黒田バズーカ第二弾」量的・質的金融緩和の拡大
時は2014年10月31日のハロウィンでした。
2014年4月に消費税も5%から8%に引き上げられ国内の景況感も悪化した中、その年の10月に日銀は量的・質的金融緩和の拡大(追加緩和)を決定しました。
なぜかと言うと、第一弾の時に「物価上昇率2%」をコミットしたのですが、この段階ではまだ1%程度までしか上昇していなかったために、さらなる緩和で「物価上昇率2%」を達成しようとしました。
主な具体策は以下です。
この時期での追加緩和が市場の予想に反していたため、「ハロウィンサプライズ」と呼ばれ、ドル円・株式共に大きく上昇しました。
「黒田バズーカ第三弾」(マイナス金利付き量的・ 質的金融緩和)
時は2016年1月29日。
2016年に入ってからもコミットメントした「物価上昇率2%」を達成できない日銀は、「量」・「質」の緩和では足りないとして「金利」面からも緩和を促しました。
俗にいう、「マイナス金利」の導入です。
マイナス金利導入とは、銀行が日銀に預けているお金に関して「預けすぎると逆に金利をもらうよ!」という話です。
日銀にお金を預けておくと、お金が減っていくんです。
おかしな話ですよね~。
でも欧州では実際に導入されていた制度ですが、日本では初です。
そうなると、銀行は企業にお金を貸し→市場のお金が増え→円安・株高になる
というシナリオを描いたのです。
具体的には、以下政策を取りました。
しかし、その後ドル円は円高方面に向かいました。
中国の景気不安、米国での利上げの延期だったりと外部要因の悪化が原因です。
とどめは、イギリスが国民投票でEU離脱が濃厚になり、一時99円まで円高が進みました。
「黒田水鉄砲第4弾」
イギリスのEU離脱で市場が混乱する中、黒田日銀総裁は第4弾となる金融政策を2016年7月29日に発表しました。
それは、「ETFの買入額を年3兆3000億円から年6兆円に拡大する」というものでした。
これは市場にとって期待外れの政策で、99円から105円に戻ってきていた
ドル円を下落させてしまいました。
「黒田水鉄砲第5弾」
時は2016年9月21日、第5弾の政策である
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を発表しました。
最大の趣旨は、国債の「イールドカーブ」をコントロールするというものです。
「イールドカーブ」とは・・・
通常短期の国債利回りは低く、長期の国債利回りが高くなります。
この「金利差」を「イールドカーブ」と呼び、この利回りの差によって銀行は運用益を確保します。
しかし、これまでの政策で日銀が国債を買い続けたことにより、「イールドカーブ」がフラットになっていたのです。
フラットになることによって、銀行の収益は悪化し、マイナス金利導入により、株価も低迷していました。
この「イールドカーブコントロール」、プロの金融政策を評論する人によってはかなりナイスな政策と言っている人もいましたが、株式市場では銀行株のみ上昇し、為替には大きく影響しませんでした。
とここまで、黒田総裁が行ってきた5つの金融政策について解説しましたが、政策のタイミングをチャートに表しました。
2013年4月4日 :「量的・質的金融緩和」
2014年10月31日:「量的・質的金融緩和の拡大」
2016年1月29日 :「マイナス金利付き量的・質的禁輸緩和」
2016年7月29日:「ETF買い入れ額増加による追加緩和」
2016年9月21日 :「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」
長期で見ると、第一弾・第二弾における効果の高さがうかがえます。
第三弾からは、黒田バズーカも威力が弱まり、外部環境に左右される市場となってますね。
この5つの金融政策の後に、トランプ相場が来ます。
次回、アメリカの金融政策の流れを解説した上で米国経済指標とトランプ相場についても解説します。
-FX初心者向け解説
-FX, 日銀, 金融政策